「編む」projectのこと 後編
『編む』プロジェクトとは、ことのは不動産が使われなくなった空家を買い取り、建物の個性や以前の使い手の想いを読み解きながら地元工務店と協働でそれらに再び命を吹き込み、未来の使い手につなげる空家改修再販事業です。
◎前編のコラムはこちらをご覧ください。
「編む」projectのこと 前編
2019年9月から本格的に動き出した第1弾の『編む yokoyamacho』。
20年ものあいだ時が止まっていた建物をよみがえらせることは想像していた以上に大変なもので、建物全体をジャッキアップして持ち上げる「曳家(ひきや)」という思いがけない大工事から始まりました。
ギー、ギーと音を立てながらゆっくりと建物を地面から浮かせ、持ち上がった状態で傷んだ柱を取り替えたり、基礎を打ち直したりしていくのです。宙づりになった柱から傷んだ部分を切り落とし、ぴったり組み合うように新しい柱を繋いでいく「根継ぎ」と呼ばれる作業は、驚くほど技巧的でどの大工さんでもできる仕事ではないというのがよく分かりました。一般の町家改修でここまでの工事をすることは珍しいそうですが、建物の傷みが大きかったこともあり、安心して暮らせる生活の場として使っていただくために、また次の世代にもこの建物を残してもらうに、どうしてもそこまでしておきたかったのです。
新しくなった土台に下ろされてシャキッと姿勢よく立つ姿を見て思ったのは、柱や梁や基礎部分はまさに人間の骨格と同じなのだということ。完成してしまえば表から見えないところですが、全体を支えるだけでなくその建物らしさを決める重要なものだと改めて気づかされました。
◎編む instagramのストーリーアーカイブから「曳家」や「根継ぎ」の様子が動画でご覧いただけます。
春が近づき暖かくなると、建物全面に足場をかけての大工工事も始まりました。外壁が張り替えられ、新しい床や壁が出来ていくと、止まっていた時が少しずつ動き出したように建物が生き生きとしはじめます。強度上どうしてもそのまま使うことができない場合を除いて極力元の部材を残して欲しいというオーダーは、大工さんにとってはとても手間のかかることだと思うのですが、おかげで以前の家の記憶を残しながら命を吹き込むことができたように思います。
5月中旬現在、工事はいよいよ佳境に入り、おおむね壁の左官工事と復元した建具の取付を残すところとなりました。ここからぐっと目に映る姿が変わってくると思います。そして、来月の完成時には、彗星倶楽部さんと共同で『きのふいらつしつてください』という展覧会を開催することになっています。県内外のアーティストが元の空家に残っていたものを手掛かりに作品をつくってくださいました。ぜひ建物の完成をともに見届けていただければ幸いです。
◎販売価格や詳しい資料等は近日中に掲載いたします。
日時:2020年6月13日(土)~28日(日)13:00~19:00 (要予約)
※6月26日(金)・27日(土)・28日(日)は不動産購入者様向けの内見会です
会場:「編む yokoyamacho」金沢市横山町18-34(google map)
予約方法:こちらのサイトからご予約ください。
1組3名様までご来場いただけます。
展示作家(50音順)
今村 文 Fumi Imamura
伊佐治 雄悟 Yugo Isaji
小沢 裕子 Yuko Ozawa
道念 邦子 Kuniko Donen
中川 智映子 Chieko Nakagawa
中嶋 寿子 Toshiko Nakajima
中森 あかね Akane Nakamori
山本 優美 Masami Yamamoto
山下 千代子 Chiyoko Yamashita
主催:彗星倶楽部 ・ことのは不動産株式会社
助成:公益財団法人渋谷学術文化スポーツ振興財団